2018.08.22ホームエレベーターのある家

3階建や4階建住宅を検討中の方、高齢者がいるご家庭や自分たちの老後に備えてと、ホームエレベーターの設置を希望されるお客様が増えています。

高齢社会に向けた普及を図るために、一般エレベーターの構造規定を緩和した「ホームエレベーター」が設置され始めたのが平成元年のことです。

ここ数年は普及率や設置台数も増加傾向で、新築だけでなくリフォームで設置されるケースも多くなっています。今回はそのホームエレベーターを設置する上でのポイントを説明します。

駆動方法

ホームエレベーターには、ロープでカゴを吊る「ロープ式」と油圧ジャッキでカゴを押し上げる「油圧式」の二つの駆動方法があります。

何がどう違うのか、業界最大手のパナソニック ホームエレベーターの3人乗り普及モデル「1414」シリーズで比較してみました。

平面図を見ると、油圧式の場合は昇降路内の1/3程度がジャッキで占められています。そのため同じ3人乗りでも、ルーム間口方向の有効寸法は油圧式が850㎜、ロープ式が950㎜とロープ式のほうが10㎝広くなっています。

そして二つの駆動方法のホームエレベーターでもっとも違う点は「最大昇降行程」と「最大停止階」です。

ロープ式の最大昇降行程は10.0m以下、最大停止階は4ヶ所に対し、油圧式は最大昇降行程7.0m以下(機種により6.2m、3.3m以下)、最大停止階3ヶ所となっており、ロープ式のほうが最大昇降行程は長く、最大停止階も一層多くなります。

気になるエレベーター本体の価格ですが、パナソニック ホームエレベーター3人乗り普及モデル「1414」シリーズでは、ロープ式が313~408万円、油圧式が320~365万円となっておりそれほど大きな差はありません。
設置工事費も含め、実際に三和建設がお客様に提出する見積もりにおいても、ロープ式のほうが安くなり、新築RC住宅ではロープ式を採用することがほとんどです。

油圧式は掘り込みガレージの駐車場から直上階のみへ上がる場合などの停止階が少ないケースや、木造住宅のリフォームで、畳一枚分の押入れをエレベーターにするなど、限られたスペースへの設置に適しています。

サイズ

パナソニックさんのホームエレベーターには2人乗り(又はゆとりの一人乗り)、3人乗りがあります。 リフォームであれば設置場所に制約があって、省スペースタイプを選択せざるを得ない場合もありますが、新築の場合なら将来を見据えて3人乗りタイプをおススメします。

パナソニックの普及モデルのロープ式ホームエレベーター「ミディモダンⅤ」で1212(2人乗り)と1414(3人乗り)を比較してみました。

「2人乗り」と聞くと、結構な広さを想像されるかもしれませんが、畳半畳程度に大人二人はとても窮屈です。車いすの利用なら介助者は同乗できません。

ルーム内の有効寸法を比較すると、3人乗りの方が間口方向で220㎜、奥行方向で200㎜ 広くなります。3人乗りにすると昇降路の内法寸法を広く確保しなければならないのですが、新築の場合、20~30㎝程度なら設計上の工夫でなんとかなるはずです。

エレベーター本体のメーカー希望小売価格は、3人乗りが313~408万円、2人乗りが298~393万円なので費用対効果を考えるとやはり3人乗りのほうが魅力的です。

イニシャルとランニングコスト

荷物の運搬や介護の問題など、設置するとメリットがあるホームエレベーターですが、やはり気になるのはその費用です。RC住宅に実際に導入した場合について説明します。

当社の新築RC住宅に導入する場合、実際にお客様へ提示する見積金額はエレベーター本体と設置費用を併せて2階建で200数十万円、3階建で300万円前後となることが多いです。
※メーカーや機種、仕様や階の高さによっても変わりますので、あくまでご参考に・・・

気になるランニングコストですが、さぞかし電気代がかかるのだろうと思いきや実は一日20回使用したとして、月額600円前後の電気代です。
意外に安くないですか?

そして忘れてならないのが、高性能なエレベーターも「機械モノ」だということです。安全に使い続けるには必ず維持費やメンテナンス費用が必要になります。

車や家電と同様に、長期に渡って使用することでいつか不具合が生じます。家庭用のエレベーターは実際の使用頻度も少ないことから、「大事故に至るケースは確率的に少ない」といった声もあるようですが、エレベーターは人命がかかっている乗り物であることを忘れてはなりません。

建築基準法では、ホームエレベーターの所有者には「維持管理義務」があり、ホームエレベーターを設置すれば、メーカーからこの義務を引き合いに定期点検について「メンテナンス契約」を勧められます。

パナソニック ホームエレベーターの場合、年1回の定期点検なら43,000円~、使用頻度が高く年2回の定期点検の場合は59,000円(いずれも税別)となっています。

パナソニック ホームエレベーターのメンテナンス契約には以下の内容が含まれます。

  • 定期点検(調整・給油・清掃・検査)
  • 緊急・故障出動(24時間365日対応)
  • 停電時自動着床装置用バッテリーの交換
  • 交換部品代特別割引


年月が経つにしたがって消耗し交換が必要な部品代については、 割引こそあるものの別途費用が必要となります。

メンテナンスは強制ではなく、自己責任の範疇で「壊れるまでは契約しない」と、先延ばしにする方もおられるようです。

ただネットを見ていると、メンテナンス契約をしていないがために、十数年後の基盤交換に「片手以上の見積もりが出てきた」なんて話もあったので注意が必要です。

さきほどパナソニックのお客様窓口へ電話して「耐用年数」について確認しました。実際には長期間使用されている事例もあるが、設計上の耐用年数は法定償却耐用年数17年、計画耐用年数25年とのことでした。
また5年後や10年後に交換が必要な部品もあるそうですので、メンテナンス契約はしておいたほうがよさそうです。

固定資産税

土地や建物を所有すると、毎年収めることになるのが固定資産税です。
建物の固定資産税は、その建物の資産価値によって評価額が異なります。
ホームエレベーターのある建物は評価額が上がるため、固定資産税も上昇するのです。
かつて固定資産税課の担当の方に聞いてみたことがありますが、その算定基準は公開されておらず、条件にもよりますが、お客様からの聞き取りでは年間で2万円程度高くなるようです。

固定資産税課の完成確認の様子(RCギャラリー西宮)

そこでご家族に高齢者がおらず、今すぐにエレベーターが必要ではないという方には将来的に設置できるスペースと共に電源・電話配管の確保をおススメしています。
エレベーターの昇降路となる部分には床を作っておくと納戸としてお使いいただけます。

将来対応とはいえ、昇降路は新築と同様にしっかりと構造検討をおこなうことが必要です。
また昇降路内には給水や排水管などの設備配管を通してはなりませんし、エレベーター設置の際には、建物の建築確認済証や完了検査済証が必要となりますのでご注意を。

実際にこのケースで、お引き渡しから数年後にホームエレベーターを設置したこともがありました。
費用は新築時の見積もりに較べて、内装撤去費と搬入費の数十万が加算されただけでした。




最後に・・・
あるお客様からホームエレベーターについてこんなお話を伺ったことがあります。

そのお客様は数十年前に新興住宅地として開発された分譲住宅を購入され、現在は子どもたちも巣立ち、ご夫婦の終の棲家として鉄筋コンクリート住宅への建て替えを希望されたのでした。

「まわりの家も子どもたちは独立して出て行っている。
夫婦だけなら1階だけの生活で事足りるので、どの家も2階はいつも雨戸が閉じられている。
建て替えにあたり平屋も考えたが、盆や正月には子どもたちが孫を連れて帰ってくるので泊まる部屋は欲しい。
そこで高齢者が2階を存分に使えるようにエレベーターが欲しいのです。」

このお客様は「同一階のバリアフリー」はもちろん、「上下階のバリアフリー」も考えてホームエレベーター付きの鉄筋コンクリート住宅に建て替えられたのでした。