2018.07.30掘り込みガレージのある家

西宮、芦屋、神戸の山手エリアでは、道路より一段上がった高低差のある宅地をよく見かけます。旧い宅地の場合、道路際には高い石積み擁壁があって、玄関までは長い階段を上ることになっています。また山手で海が見渡せる人気のエリアにも関わらず、敷地内に駐車スペースがないために土地の価値を下げていることもあります。

今回のコラムでは、こうした「道路と高低差のある土地」でご要望が多い「掘り込みガレージ付きRC住宅」を、施工事例を交えながら取り上げてみます。

上屋への動線計画

道路と高低差のある土地での掘り込みガレージの二つの事例をご紹介します。

土木造成工事として、建物とは切り離して掘り込みガレージを造る事例です。

山手エリアの分譲地によくあるケースで、一般的に掘り込みガレージの築造は土木関係の業者がおこないます。

この場合、ガレージから玄関へは外階段を上ることになりますが、3~5mもの高低差を上がるとなると高齢者や小さい子供さんには厳しいでしょうし、悪天候の時にはなおさらです。

また完全にガレージと上屋を離さずに部分的に載るとなると、ガレージには上屋の荷重を含めた構造計算が必要となります。この場合は建物の基礎形状や水仕舞いの検討をしっかりとやっておく必要があります。

こちらは上屋とガレージを一体化させた事例です。ガレージ奥に上階と繋がるエレベーターや内階段を設ければ、雨に濡れずに家の中に入ることができます。

建物とガレージが繋がるので、全体が建築物の扱いとなり、構造計算も一体でおこなって安全性を確保します。

この場合、一般的には造成工事を扱うことのできる建築会社が一括で工事をおこないます。「ガレージと上屋を別会社で」といった提案をする会社もあるようですが、一体型は施工不良によるクラックや漏水のリスクが高く、保証面でも責任の所在があいまいになるためお勧めしません。

ホームエレベーターの活用

先に述べた「上屋一体型 掘り込みガレージ」で、当社がよく提案しているのがホームエレベーターを活用した計画です。

こちらの敷地は道路よりも3.6m程度高くなっていました。一般的な住宅の場合、1階から2階に上がる階段の昇降高さは2.8~3.0m。それを較べると玄関から道路に出るのに、毎日3.6mもの高さの屋外階段を上り下りするのは、将来的なことを考えると重要な課題です。

そこでおススメしたいのが、ガレージから上階に上がるホームエレベーターを設ける案です。RC住宅なら、エレベーターの昇降路も上階まですべて鉄筋コンクリート造となり、構造的にも一体化するので安心です。家族は普段はホームエレベーターを使って上下移動がメインとなり、外階段は来客時など、サブとしての利用になります。

余談ですが、3.6mもの高低差があると、前面道路が広くない場合は、道路から見上げても建物正面はほとんど見えません。そこで掘り込みガレージの正面が「家の顔」となるようなデザインを提案することもあります。

コストについて

「掘り込みガレージはいくらでできますか?」
ホームページをご覧になってよくお問合せいただくのですが、敷地高低差の程度や前面道路の幅員、隣地との空き寸法や地盤の固さなど、コストに関係する項目が多くて即答できないのが本音です。必ず建築・土木の技術者が、施工者の立場で現地を確認した上でお答えするようにしています。

三和建設の鉄筋コンクリート住宅は、建設部門である「RC建設部」が携わりますが、宅地造成や土留め擁壁を造るのは土木部門の「開発・造成部」がおこないます。社内に土木部門があることで、掘り込みガレージなど造成工事を伴う建築計画も、初期段階から設計・施工(特にコスト)の両方を検討しながら進めることが可能で、「三和さんなら」と、これまでも数多くの依頼をいただきました。

今回は神戸市で建築した掘り込みガレージのあるRC住宅を参考に、全体コストに大きな影響のある山留め(土留め)工事の流れをご紹介します。

工事着工前現況

今回の現場では、計画する掘り込みガレージが敷地境界に近く、掘削によって隣地の塀や建物に影響が出そうなので「親杭横矢板工法」での山留め(土留め)工事をおこないました。

まずは土留めとなる親杭(H型鋼)を挿入するために、オーガーで削孔します。

親杭間に横矢板を差込み、腹起こしや切梁と呼ばれるH型鋼で固めれば山留め工事は完了です。



5mの山留め工事をおこない、鉄筋コンクリートで造った掘り込みガレージがこちらです。

こちらのRC住宅では、掘り込みガレージ上を利用して広い庭を確保しました。ガレージ横に設けたエレベーターは、上昇すると風除室を介して庭先に出るようになっています。

今回は私どもへのお問合せのうち、最も多い「掘り込みガレージ」を取り上げました。この他にもガレージ内や地下室内の防水や湿気対策、換気方法など注意すべきポイントはまだまだたくさんあります。

掘り込みガレージと建物を一体で設計するのも施工するのも、経験とノウハウが求められます。私たちが重視しているのは安全に工事をおこなうこと。ご要望に沿った工事が可能かどうか、周辺環境も含めて現地を確認するところから始まります。