ビルトインガレージのある家

RC住宅を検討される方の中には、ビルトインガレージをご要望される方も少なくありません。 大切な愛車を盗難や汚れから守るのはもちろん、雨の日には濡れずに乗り降りができますし、 夏の炎天下では車内の温度上昇を抑えられます。 このコラムではRC住宅においてビルトインガレージを計画する上で特に注意してほしいポイントを実務者の目線でご説明します。

ガレージに必要な寸法

私たちが通常2台分のビルトインガレージを計画する際には、間口6m、奥行き6m(壁芯寸法)を確保するようにしています。コンクリートの壁厚を引くと、内法寸法は約5.8m四方となります。

ビルトインガレージの計画においては単に駐車するだけでなく、ドアやトランクの開閉や前後を通って住居に至る通路も検討しなければなりません。

このサイズであれば、ほとんどの3ナンバー車(全長5.0m以下、全幅1.8m程度)2台を無理なく収容できます。

ただし、国産のロングボディワゴン(ハイエースやキャラバン)やベンツのVクラス、大型のアメ車などは全長が5Mを優に超えたり、全幅が2M以上のものもあるので、計画には注意が必要です。
またガレージ内にバイクや自転車を置くような場合も、車庫の寸法+アルファで考えておく必要があります。

ガレージシャッター

ガレージの開口部にはシャッターを設けますが、一般的な巻上げ式軽量シャッターの他に静かでデザイン性に優れたオーバースライダー(パネルが天井面に収納)が人気です。

各部の寸法がそれぞれ異なるので、よく採用する機種で比較してみます。

2台分のビルトインガレージ開口寸法(間口6m程度)なら、軽量シャッターもオーバースライダーも大抵の商品がサイズ対応しています。
おススメなのはパネルがフラットなアルミ製のオーバースライダー。
見た目もシャープでRC住宅にピッタリです。

アルミパネルオーバースライダー施工例

ところが3台分(間口9~10m)のガレージとなると、シャッターの選択肢が限られてきます。
一般住宅用の軽量シャッターは構造上2台分の間口しか対応しておらず、巻上げ式シャッターでの対応となると、工場などで使用する重量シャッターとなります。

重量シャッターはパネルに使用されている鋼板も厚く(1.2ミリ以上)なり、防火区画や防煙区画に使用するくらい頑丈なシャッターですが、デザインやコストを考えるとあまり住宅用のガレージには使いません。
ということで3台分のビルトインガレージシャッターならオーバースライダーを採用することが多いです。

照明計画

夜間の帰宅時やガレージ内での作業、愛車のライトアップなど、 せっかくのビルトインガレージですから照明計画にもこだわりたいものです。

一般的には照明器具を天井面に配置するケースが多いのですが、 オーバースライダーの場合は照明器具とパネルとが干渉しないか注意が必要です。

また車の真上だけに照明があると、車間部分や通路に車の影が落ちて足元が暗くなります。 ガレージ内の照明計画では、車が停まってあることを前提に車の前後左右にも 暗がりができないように配慮します。

換気・排気計画

コンクリート住宅ならガレージ部分と住宅部分を隙間のないコンクリート壁で仕切るので あまり問題ではありませんが、暖気運転中の排気ガスが住宅内に侵入して死亡する事故も かつて報告されています。

エンジンがONの時や揮発性のある塗料やオイルを使用する場合には、 シャッターを開けておくことはもちろん、窓や換気扇の設置も検討します。

ガレージは面積が広く一般住宅用の換気扇では風量が限られるため、 工業用の有圧扇と呼ばれる強力な換気扇を取り付けることもあります。

車好きで、ガレージ内でエンジンをかけながらメンテナンスをおこないたい方には こんな設備を取り付けたこともありました。

EG Way Out/ (株)セーフティーライフ

こちらはガレージ専用の排気ガス排出システムです。 設置するには設計段階で設置場所(下地補強が必要)や電源(100V)の確保、 排気孔の位置を決めておく必要があります。

上のガレージではロフト上部(写真中央奥)に設置しました。 使用する際は巻取り式のダクトを引っ張り出し、専用のアダプターを接続し、 これをマフラーの背後に置けば設置完了です。

車種によってマフラーの高さや数(一本出し、二本出し)が異なるので、 アダプターはカスタムオーダーでも対応されています。

今回はRC住宅でビルトインガレージを設ける時、注意したいポイントを挙げてみました。 堅牢な鉄筋コンクリート構造なら、1階に2台分、3台分のビルトインガレージを設けることができます。 道路と高低差のある敷地であれば、建物と一体になった「掘り込みガレージ」を造ることもあります。

住まいと同様に車にもこだわりのある方に、ぜひとも参考にしていただきたいと思います。