デザイン階段のある家

「プレミアムな邸宅」に欠かすことができない構成要素が「階段」です。住まいを立体的にとらえ、必要な強度や使いやすさを確保しつつ、見た目にインパクトのある階段をデザインするのは意匠設計者の「腕の見せ所」ともいえます。

最近では、住宅建材メーカーの取り扱う商品の中にもデザイン性に優れた階段ユニットがありますが、そのほとんどは木製やアルミ製で、ビスやボルトを使って組み立てるように設計されています。これは住戸内で火花の出る切断や溶接が難しい木造住宅での設置が前提となっているからです。

RC住宅の場合、内部造作工事前のコンクリートむき出しの状態であれば、室内であっても火花が飛び散る切断や溶接接合が可能です。そこでRCの邸宅では、意匠設計者は加工性がよく強度のあるスチールを使ってより意匠性の高いデザイン階段を提案することが多いのです。

今回のコラムでは、三和建設がこれまで手がけた事例をタイプ別で紹介しながら、RC住宅におけるデザイン階段のポイントをご紹介します。

RC階段

コンクリートは強度を保ちながら、自由にカタチを創ることのできる材料です。

その特性を活かし、躯体と同様に鉄筋コンクリートで階段を造った事例です。
あらかじめコンクリートの内部にアンカーを埋め込んでおけばデザインされたスチール手摺を見た目もスッキリと溶接で強固に固定できます。

またコンクリート本来の強度を活かして、壁から持ち出しただけのシンプルな方持ち階段もあります。

RCの片持ち階段は、一段ずつ型枠を組んで配筋し、慎重にコンクリートを打設するといった手間が掛かりますが、その甲斐あって出来上がりはインパクトのある階段となります。

スチール階段

【ササラプレートタイプ】

他の材料よりも薄い鋼材を用いることで、階段に必要な強度は確保しつつ、見た目はシンプルに、設計者のアイデアをカタチにしやすいのがスチール階段です。

両側にササラと呼ばれるプレートのあるこの階段は、ササラの形状によってずいぶんと雰囲気が異なります。下はササラプレートをイナズマ型にし、集成材の踏み板を乗せたタイプです。

スチール階段の場合、踏み板と踏み板の間の蹴込み部分が抜けている「スケルトン階段」が多く、小さなお子さまには危険が伴うシーンも想像できます。
そこで子どもが物心つくまでは、階段裏にネットを張っているご家庭もあります。


【螺旋階段】

デザイン性の高い階段と云えば、やっぱり螺旋階段ではないでしょうか?
デザイナーズ住宅やTVドラマではよく見かけるためか、お客様のご要望にもよく出てきます。
比較的省スペースで設置することができ、踏み板が回りながら上へ伸びていく造形はまるでオブジェのようです。

ただ当社では住戸内のメイン階段としてよりも、屋上に上る屋外階段として採用するケースが多いです。
デザイン性は抜群の螺旋階段ですが、中心部では踏み板の幅が狭く、階段の途中には踊り場がないこともあって、大きな荷物を抱えての昇降などは注意が必要です。


【片持ち階段】

壁から飛び出た踏み板が、まるで宙に浮かんでいるような片持ち階段ですが、実は支えている下地材は鉄骨部材で造られています。
鉄筋コンクリートモデルハウス「RCギャラリー西宮」の階段の一部も鉄骨の片持ち階段となっています。

その下地はいったいどうなっているのか、工事の様子を紹介します。

コンクリート打設時、型枠内にあらかじめ踏み板溶接用のプレートを仕込んでおきます。
階段にかかる荷重を強固なコンクリート壁で支持するのです。

このプレートにスチールの踏み板を溶接で固定します。

この後仕上げとなる集成材を被せると完成です。
壁のプレートも内装下地に埋め込まれ、踏み板だけが壁から突き出したようになります。


【力桁(ちからげた)階段】

力桁(ちからげた)とは、階段の中央に配した桁で踏み板を支える構造の階段です。
もともと力桁階段は木製で、一本の極太の桁で階段を支えているため、「力持ちの桁」からこの名前がついたようです。

写真の階段は、厚み19ミリの二本のスチールプレートで階段を支えています。
踏み板が天秤にならないように、先の片持ち階段同様に下地にはスチールのプレートを溶接で取り付けています。

今回はいろんなカタチのデザイン階段を取り上げました。
「階段詳細図が描ければ一人前」
ベテランの設計者の方から、そんな声を聞いたことがあります。

完成形をイメージしながら、ディテールにこだわったデザイン階段のある空間を創ることは住宅建築に関わる者の醍醐味だと思うのです。