おかげさまで創業53年。私たちは兵庫・宝塚の鉄筋コンクリート技術者集団です。
みなさん、こんにちは。
RCギャラリースタッフの沖田です。
家族や友人が集まるリビングを明るく広々とするための方法として、吹き抜けがあります。
頭上の開放感は気持ちがいいですし、部屋を実際の帖数よりも広く見せる効果がありますが、
構造面や冷暖房効率、照明の配置など、注意しなければならない点もあります。
今回はRC住宅の吹き抜けと構造計画について取り上げてみます。
構造計画について
「家の中心に吹き抜けや階段があると家が弱くなる」
ある家相の本にこう書いてありました。
今でこそ木造住宅も構造計算で安全性を確認するのが当たり前ですが、
その昔、強い家は大工の勘と経験がモノを言う時代がありました。
上はその頃の「先人の千恵」だと思います。
当時の家(在来木造)の中心には太くて強い大黒柱があるのが一般的でした。
ここに吹き抜けや階段があると大黒柱の位置がずれたり(偏芯)、太い柱が設置できずに
家の強度を低下させることになってしまうのが理由です。
私たちが建てるRC住宅のほとんどは、耐力壁で建物を構築する「壁式鉄筋コンクリート造」と
なっています。
在来木造とは違って大黒柱はありませんが、大きな吹き抜けや階段を設けるには
同じように構造計画にも注意が必要です。
壁式鉄筋コンクリート造は、床・壁・屋根の6面が一体化した構造体です。
床・壁・屋根を鉄筋コンクリートで一体化して造る工法のため、
木造や鉄骨造のような部材の「継ぎ目」がなく、堅牢な6面体がいくつか集まって、
地震や台風といった強い外力を吸収し分散します。
ただし完全一体化した構造体も、どこかに「大きな穴が開いている」状態では
地震や台風など大きな外力が加わった場合、強度が発揮できず壊れてしまいます。
6面体のひとつを、ダンボール箱に見立てて説明します。
紙のダンボール箱も、しっかりと蓋をすれば少々重いものを入れても丈夫ですし、
積み重ねても、横から押しても結構強くてまず壊れることはありません。
ところが側面や上蓋に大きな穴が開いているとなると、
力が全体に均等に伝わらず、箱の強度は下がってしまいます。
壁式鉄筋コンクリート造の場合、上蓋の大きな穴に該当するのが「吹き抜け」となります。
いくら堅牢な鉄筋コンクリート造とはいえ、構造的な考えを無視して吹き抜けを設けることはできません。
壁式鉄筋コンクリート構造には安全性が確保できるように、XY方向に設ける壁の量や壁の厚み、
壁梁の高さなどの技術的基準が設けられています。
下は1階リビングの上部に吹き抜けのある2階の平面図です。
建物が地震や台風といった強い外力を受けた時、その力は主に水平面(=床スラブ)を通って
各部の壁に伝達されます。
吹き抜け部分は床がありませんので、水平力は周囲の壁や床を迂回して流れることになります。
吹き抜け周囲の床の幅を適切に設けたり、壁の厚みや強度を上げることで安全性を確保するのですが、
RC住宅で吹き抜けの設計にあたっては、こうした力の流れを理解しておくことが重要です。
以下は構造計画として好ましくない事例を挙げています。
「RC造なら、他の工法とは違ってどんな間取りでも自由にできる」
そんなふうに思われている方がおられます。
でも実際は構造体自身の重さがあるので、
軽い木造よりも綿密な構造計画が重要になります。
同じ一級建築士でも、「木造はできるがRCは手がけたことがない」
という設計者も多いです。
私たちは設計も施工もRC技術者としての豊富な経験を元に、
RCのポテンシャルを活かす家創りをおこなっています。
→「住まいのこだわり・・・大きな吹き抜けのある家(後編)」に続く
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