2015.11.17

杭のはなし~「地盤改良杭」と「基礎杭」

おかげさまで創業50年。私たちは兵庫・宝塚の鉄筋コンクリート技術者集団です。
 

横浜市で地上11階建て86戸のマンションが傾いたことが発端となり、
杭打ち工事のデータ改ざんが大きな社会問題になっています。

連日のニュースで「支持層」や「N値」など、建築の専門用語が目に付きますが、
キャスターや解説者による説明が繰り返されていますので、
業界関係者でない一般の方にも、ある程度はその経緯がお分かりいただけると思います。

「三和建設さんは大丈夫ですか?」

問題の発覚以降、毎日のようにこのご質問を受けております。

やっとの思いで手にしたマイホームが、施工者によってちゃんと建てられているのかと
ご心配されるのは当然のこと。
 “家創り”のプロとして、その都度私たち取り組みをご説明させていただいております。

 

 

 

これまでにもご紹介してきたように、
当社で建築するコンクリート住宅においても、軟弱地盤には杭工事をおこなっています。

ただし、私たちが手がけることの多い住宅をはじめとする中低層建築物と、
問題のあった高層マンションのような大規模建築物とでは、
杭をはじめとする基礎補強や地盤補強方法は大きく異なってきます。

今日は、私たちが建てる中低層建築物において、施工することが多い「地盤改良工法」について、
展示場スタッフの吉川がお伝えします。

 

 

 

【地盤の固さは“N値”で決まる】

「杭が支持層に到達していなかった・・・」

「支持層」とは、建物の荷重を支える固い地盤のことです。
それでは、支持層の固さはいったいどうやって求めているのでしょうか?

地盤の固さは日本工業規格(JIS)が定めた「N値」が指標となります。
「N値」は、「ボーリング調査」で掘削した孔を使い、1M毎に「標準貫入試験」をおこなって
求められます。

標準貫入試験①

標準貫入試験②

N値は、土質が粘性土か砂質土かによって硬軟が違います。
参考までに目安を表にまとめました。

N値

 

 

 【「地盤改良杭」と「基礎杭」】

どちらの杭も同じように軟弱な地盤に施工するのですが、
構造的な考え方や施工方法は全く異なります。

今回問題になっている高層の傾斜マンションで施工された杭は「基礎杭」となります。
私たちが主に手がける2、3階建の鉄筋コンクリート住宅で施工する杭のほとんどは「地盤改良杭」です。

 

「基礎杭」

「基礎杭」は「杭地業工事」として施工がおこなわれます。

「地盤改良杭」との施工上の大きな違いは、杭頭の処理です。
「基礎杭」では、基礎に杭頭を呑み込ませ、基礎と杭を一体化するのです。

基礎杭

大規模建築物や高層建築物の場合、建物の自重や積載荷重といった鉛直荷重だけでなく、
地震時に発生する水平力や曲げ、せん断、引き抜き力に対しても、杭が抵抗するように設計されます。

 

「地盤改良杭」

反対に比較的地盤が良好な地域の中低層の建物では「地盤改良杭」が多く用いられます。

地盤改良杭
※写真は柱状改良杭

「地盤改良杭」は「地盤補強工事」のひとつとして施工されます。

「地盤改良杭」は、基本的に建物の基礎と杭を繋ぐことはありません。
軟弱地盤に施工した杭の上に建物が載ることで、建物が「沈み込まない」ように設計しています。
「地盤改良杭」は建物重量を支えるだけの鉛直支持力を持つのみの役割です。

 

「地盤改良杭」と「基礎杭」
どちらの場合も、ボーリング調査(→こちら)と標準貫入試験によって得られた地盤データを基に、
地盤専門の技術者と建物の構造設計者が、その建物の階数や規模、施工計画や工期、予算を勘案しながら
構造検討をおこない、最適な工法を決定しています。

 

 

【地盤補強工事のいろいろ】

前述で、「地盤改良杭は地盤補強工事のひとつ」と述べました。
ここでは、「地盤補強工事の種別」について触れてみます。

地盤改良工法の選定の基準となるのは、「N値」
それぞれの深度毎の「N値」によって採用する工法が異なってきます。

当社で手掛ける鉄筋コンクリート住宅は、標準仕様が「べた基礎」です。

べた基礎

地表面すぐに固い地盤がある場合には、「直接基礎」として地盤改良はおこないません。

 

地盤補強工事のいろいろ

 

【表層改良工法】
 軟弱な地盤が、地表面から2m程度までなら、建物下の土とセメント系固化剤を攪拌して
人工的に固い地盤に置き換えます。(→詳細はこちら

表層改良工法

 

【柱状改良工法】
固い地盤の層まで、直径40~60cm前後のアースオーガー(大きなドリル)で掘削し、
到達すればセメント系固化剤を投入しながら逆回転で引き上げます。
こうすることで土中に電柱のような杭ができあがります。
柱状改良杭は深さ8m程度まで施工が可能で、地盤補強工事の中ではもっとも多く採用されています。(→詳細はこちら

【小口径鋼管杭工法】
低いN値の続く軟弱地盤(阪神間では大阪市内や尼崎市に多い)では、直径10~12㎝前後の鋼管製の杭を
支持地盤まで挿入する小口径鋼管杭工法が用いられます。小口径鋼管杭工法は深さ30m程度までが施工可能です。
上記の地盤改良工法に比べてコストがかかる(数百万単位)ため、
早い段階で予算を見ておかないと計画自体が頓挫することにもなりかねません。

 

その他、軟弱地盤対策の地盤改良工法として「摩擦杭工法」もあります。
この場合、杭は支持地盤に到達させず、周囲の土との摩擦力で建物を支えることになります。
「小口径鋼管杭工法」に比べて、費用も大きく抑えられるケースが多いです。

【摩擦杭工法】

摩擦杭工法

 

 

 

今回は、杭に関連する「地盤補強工事」について触れました。

当社が認証取得しているISO(国際標準化機構による品質マネジメントシステムに関する規格)
には、顧客の「暗黙の要求事項」という項目があります。

これは「口には出さずとも、エンドユーザーが当たり前に求めているもの」を指しますが、
住まいにおいては、「安全、安心」に尽きると私は思います。

私たち三和建設の技術者は、創業以来50年間培ってきた技術力と経験を基に、
家創りのプロとして、鉄筋コンクリート住宅の技術者集団として、
「お客様の信頼に応える」ために、これからも愚直に仕事を続けてまいります。

 


兵庫・大阪で建てる高品質&ローコストのデザイン注文住宅。
「ビルトインガレージのある家」「屋上テラスのある家」「耐震住宅」をRC住宅で叶える。
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